取組概要地域に貢献する北海道がんプロ養成プラン

事業の概要

地域に不足する臓器横断的な知識に基づいたがんの診断・治療を行える放射線治療医・病理診断医・腫瘍内科医等の人材及び治療に貢献できる医学物理士を養成し、地域医療に従事しながらも高度ながん医療教育を継続して受講できる体制を整備する。
複数の診療科と横断的な診断・治療・緩和ケア活動を行う中で最適ながん医療を実践できる医療者、多職種医療チームと連携し看護ケアを開発・展開できる看護師、がんサバイバーシップにおけるトータルサポートができる看護師、がん医療連携の推進を担う薬剤師を養成する。
ゲノム情報に基づくがん予防医療を実践する専門医や遺伝カウンセラーを養成し、地域に配置する。オンライン診療体制整備により地理的支障や地域による人材不足を解消する。
個別化治療に有効な分子標的治療薬及び免疫治療薬の創薬研究に携わる人材、遺伝性腫瘍の発がん予防ワクチンの開発研究に携わる人材、個別化医療に貢献できる人材を養成する。

テーマごとの課題と対応策

テーマ① がん医療の現場で顕在化している課題に対応する人材養成

課題・対応策

広大な面積(国土の約23%)と低い人口密度(全国平均の約1/5)という特性を持つ北海道には21の二次医療圏があるが、放射線治療医や病理診断医・腫瘍内科医の不足により、11医療圏ではがんの標準治療の提供ができていない。医療の均てん化および地域医療を支えるため医療従事者への高度医療教育の提供が重要である。また、広大な北海道の住み慣れた地域での生活を望むがんサバイバーへの切れ目のないトータルな支援を行う人材や多職種医療チームと連携しナビゲートできる高度専門看護師の育成が必要である。これらの課題を解消するための人材を養成する。

テーマに関する強み

各大学の強みを共有し3大学(札幌医科大学・北海道大学・旭川医科大学)が連携し放射線治療医、病理診断医等の育成を図る。札幌医科大学では、地域医療機関とオンラインで結びリアルタイムの手術手技を指導する(telementoring)システムを活用し、地域医療機関に従事する医師にも高度ながん教育を提供する。医学物理士認定機構に認定された医学物理士養成プログラムを有する北海道大学では、高精度放射線治療に必要な医学物理士の育成が可能である。旭川医科大学ではがん看護専門看護師などを指導者とする体制と、全国的活動を展開する実務者(遺伝カウンセリングなど)との連携体制があり、北海道医療大学ではがん看護専門の看護師およびがん医療に関わる薬剤師の育成が可能である。

テーマ②がん予防の推進を行う人材養成

課題・対応策

がん予防の推進を行う人材の養成は、がん経験者の身体的、精神的、及び社会的ケアを提供し、再発予防にも取り組む人材が求められる。なかでも、遺伝性のがんに関しては、遺伝的背景を明らかにすることによって高リスク者に適切なサーベイランスやリスク低減治療を提供することが、がん死予防につながるが、こうした遺伝医療を提供するための人材は十分ではない。遺伝性腫瘍の診断や管理を含め、遺伝医療の基本を習得したがん専門医療人を養成する必要がある。

テーマに関する強み

札幌医科大学には修士課程に遺伝カウンセラー養成課程があり遺伝医療の専門家を養成している。北海道の6つの三次医療圏のうち、5医療圏において当大学の遺伝カウンセリングコース修了者が勤務しており、今後もさらに人材を養成・派遣する体制が整っている。また、北海道大学は道内で最初に臨床遺伝子診療部が設置され、道内初の臨床遺伝専門医の認定研修施設として機能し、中核拠点病院として強力にがんゲノム医療を推進してきていることから、札幌医科大学における遺伝カウンセラーの養成に協力し、将来的には北海道大学に認定遺伝カウンセラー養成課程の設置を目指す。さらに、旭川医科大学ではがん研究並びに診療に求められるシーケンス及びプロテオミクス解析等の解析方法とこれらのデータを適切に分析するための基礎知識、さらに血液検査所見や病理・画像所見を含む多様な臨床情報と多層オミクスデータを統合的に解析し、次世代のがん診療に利活用するための基礎知識を習得するコースを新設する。

テーマ③新たな治療法を開発できる人材の養成

課題・対応策

ゲノム情報に基づいたがんの個別化医療開発の核心を担うためには、バイオインフォマティクスの専門家の養成が欠かせない。一方、わが国ではこの領域の人材育成は体系化されておらず絶対数も不足している。バイオインフォマティクスに関する科目を設置し、本領域に対する関心を喚起し高度な医療人の養成につなげる。また、個別化治療に有効な分子標的治療薬及び免疫治療薬の創薬研究に携わる人材を養成、遺伝性腫瘍の発がん予防ワクチンの開発研究に携わる人材、革新的AI技術を活用した放射線治療装置・診断装置の開発研究にフォーカスした新しい医療機器開発教育プログラムを開設し、次世代の医療機器開発によりがんの個別化医療に貢献できる人材を養成する。

テーマに関する強み

札幌医科大学では、がんゲノムの高度な基礎研究を展開しており、がんゲノム医療の提供とゲノム情報を用いたがん診療に従事する医療人を養成できる。また、伝統的にがん免疫に関する先進的な研究が行われているとともに、現在遺伝性腫瘍の発がん予防に関する薬剤開発にも取り組んでおり、本領域の最先端の教育ができる環境にある。北海道大学では、医師主導治験でがん遺伝子診断に基づくコンパニオン診断薬と分子標的薬の同時薬事承認を取得しており、新たな治療開発を担う人材を養成できる。また、医療機器開発人材養成のための「医療機器開発プログラム」を実施してきたことから、次世代放射線治療機器に関する研究及び開発を担う人材に求められる高度かつ実践的な工学的素養を身に付けるため、革新的AI技術に関する講義、企業出身教員・企業研究者による講義を拡充することで、他に類を見ないプログラムを実現する。

出典:文部科学省ホームページ(https://www.mext.go.jp/)
「次世代のがんプロフェッショナル養成プラン(令和5年度選定)」を加工して使用